片恋いコントラスト 感想

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○はじめに

オトメイトフロンティアワークスの協同プロジェクト「triAngle」の第二弾。

片恋いコントラストは「triAngle」の主題である「三角関係」に「王道学園モノ」という要素を掛け合わせた作品です。

当初は1巻につき2人の攻略キャラとの恋愛が収録された全3巻構成で、2018年にPCソフトとして発売されました。昨年2019年に全巻が集約されたものがSwichに移植。私はSwitch版でプレイしました。

 

片恋いコントラスト -collection of branch - Switch

片恋いコントラスト -collection of branch - Switch

  • 発売日: 2019/08/22
  • メディア: Video Game
 

 

 

 

2010年に発売されたかのような郷愁を誘うビジュアル(ドウセイカレシやダブルスコアと空目してしまう)や乙女ゲーム懐古厨にとってはたまらない声優陣(緑川光日野聡近藤隆森田成一鳥海浩輔吉野裕行)。これが夢。

この「triAngle」シリーズ、オトメイト初のプラットフォーム:PCなのですが、なぜPCだったかというと、「2人の攻略キャラクターたちとの三角関係を色濃く描く企画内容と、コンシューマーのゲームよりも安い金額設定でシリーズ販売しやすいPCソフトの特性がマッチ」したとのこと…。

いや、2人攻略で税抜4000円て結構割高だと思うんですけど…?

私はプレイ速度が遅いので1巻につき8時間かかりましたが、詰めてやれば1巻6時間くらいで終わると思います。

シナリオは短いですが、恋愛描写は丁寧です。大体の伏線や恋愛過程における通過儀礼は回収してくれているので物足りなさも感じません。

複雑な世界観や設定に振り回されず、恋愛のみに集中しているので、乙女ゲームに対して、緻密なシナリオやキャラ萌えよりは、男女の恋愛過程に楽しさを求める私にとっては楽しい作品でした。

欠点は、ウダジョさんによる美麗なパッケージに反して、のっぺりとした塗りのスチルという残念ギャップと今後の展開の望みの低さ(絶望)くらいなもんです。

爽やか&切なめ胸キュンシナリオや企画の主題である三角関係もある程度楽しめるし、何より声優陣の演技が光ります。乙女ゲー初心者にも優しく、歴戦の乙女ゲーマーにとっては、奇を衒った作品が多い近年の傾向に涼風を齎す「現代学園モノ」という王道ジャンルは逆に新鮮味を与えてくれるかもしれない。

あと、シナリオ統括があの華ヤカシリーズを手掛けた高木亜由美さんであるとのこと、エンディングロールで気づきました。

華ヤカほどの癖の強さありませんが、高木さんお得意の秀逸な会話劇も発揮されていて楽しかったです。

 

本作は、乙女ゲームでは珍しい個別ルートなしの一本道で綴られる物語。

話の流れとしては、初恋編→傷恋編→三角関係編の三章構成。

 

まず、初恋編で惚れた男との恋は実りません。この手痛い失恋経験でヒロインは「もう恋なんて懲り懲りじゃ~」状態なんですけど、そこに現れる当て馬男。

初恋で傷ついたヒロインの心を癒したのは皮肉にも当て馬男との新たな恋。しかし、また恋をすることに前向きになったヒロインの心を、初恋の相手が再び揺り動かす。

『忘れられない過去の恋』と『失恋の傷を癒した未来の恋』この二つが同時にやってきた時にどちらを選ぶのか、がこの作品のコンセプトです。

乙女ゲームで一本道って手抜きじゃね?って感じる人もいると思うんですけど、少女漫画要素を取り込むために一本道を選択したのは正解だと思います。

少女漫画は乙女ゲーと違って、相手によって分岐することはありません。ハッピーエンドはひとつだけ。そんな一本道の少女漫画に乙女ゲーの特徴である「選択」によって未来を決定づけれた点に片恋いコントラストの味わい深さがあるのではないでしょうか。

あと、別の男が好きだった女に横恋慕をする切ない男の様を描いた点にこの作品の価値を見出したいですね。他の男のものだったからこそ余計に愛しくなるってあるじゃないですか……。

むしろひとつの物語に集約させたからこそ、纏まりが良く、お互いが「いつ、どのように好きになった」のかのターニングポイントが丁寧だった印象です。

2周目もエンディングを回収するための消化試合ではなく、男性キャラ視点の物語も解放されるので、1周目ではいまいち真意が掴めなかった相手のあの時の心境や行動の意味の答え合わせがあり、「なるほどな?!」という感動もあります。

 

個人的にこの作品の推しポイントは「どこにでもいる普通の男女の切ない恋愛模様」です。

片恋いコントラストに登場するキャラクターは、どこか現実世界に存在しそうなリアリティ溢れた人ばかり(乙女ゲーなんで勿論みんな顔は良いというファンタジーは付きものですが)。

悩みも過去も現実的。特にヒロインがマジで現実にいそう。

 

●ヒロイン・橘川冴子さん

趣味はラジオ鑑賞。過去のトラウマから積極的に人とは関わらず、一人でいることを好む所謂ボッチ。ネガティブで優柔不断でやることなすことも中途半端な面もありますが、この適度な欠点具合が血の通った現実にいそうな「人間味」を感じさせます。まあ、彼女の欠点も過去の経験を踏まえれば仕方ないよね…?って納得できるのでそこまで目くじら立てて非難する気にはならないです。根は思いやりのある善良な人間でもありますし。。。

作中で美少女認定をされるわけでもなく、突出した特技もないちょっとクラスで浮いちゃっているくらいの普通の女の子な冴子さんだからこそ、外面や乙女ゲーありがち運命力ではなく、様々な出来事を経て、攻略キャラが彼女に内面に惹かれたことがよく分かります。 

攻略キャラたちも、陽キャなクラスメイトにモテモテ王子様、有能生徒会長、ワンコ後輩、無気力教師、ツンデレ転校生など学園ものテンプレ属性の羅列。しかし、突出しすぎた(実は婚約者や金持ち御曹司など)設定はありませんので、ひじょ〜〜〜に一般的な感覚の恋愛を見せてくれるし萌どころもご提供いただける。

片恋いコントラストには、理不尽な憎悪・執着や前世からの因縁などの強すぎる運命力はありません(一部知らん間に惚れられる、はありますが)。

とある男女が出会い学園作品規模程度の障害を乗り越えて惹かれ合う。出会いや別れ、新たな恋を通して成長するヒロイン。過去と未来の恋愛を天秤にかけて彼女が選んだ相手とはーーーー??まさしく少女漫画。雑誌で連載するならマーガレット。
少女漫画って基本的に本命としかハッピーエンドを迎えれないけども、片恋いコントラストは当て馬相手を選ぶことができる。

どの男もヒロインにとってのヒーローで、当て馬が存在しない乙女ゲーム界隈に、敢えて当て馬を産み、かつ当て馬とのハッピーエンドを迎えることができるなんていうのは、当て馬好きには美味しすぎる。

本作のテーマである少女漫画らしさと乙女ゲームの強みをうまく融合させた片恋いコントラストの秀逸さたるや。まさにメイクミーハッピー作品。 

……とここまで大絶賛していますけど、萌え処が違う人には微妙だと思いますし、昨今の流れとは逸した平凡さがあるので、物足りない、記憶に残らない、というのが大半ではないでしょうか……。

一本道がムリだったり、プラトニック恋愛じゃ物足りない。猛烈なキャラ萌えに襲われたい。ヒロインが一途じゃないことに耐えられないなど…乙女ゲーに対して求めている萌え処にズレが生じると不快感が生じてしまうので、人を選ぶゲームであることには間違いありませんね。まあ、人を選ばない作品などこの世にありませんが。

以下、ネタバレ含む感想。

○本編感想

・第一巻 「同級生×主人公×同級生」

冒頭で述べたのですが、この作品は声優陣だけで勝利は約束されています。緑川光さんと日野聡さんの間に挟まれるなんて、ドリームでしか、ない。当て馬が樫永和兎って言うんですけど、声帯が日野聡さんという私の性癖ママ。加えてこじらせ金髪王子様属性。乙女ゲーにおける初恋が金色のコルダ2の加地葵の女にとってはもはや凶器。第一印象から「好きです、付き合ってください」と絶叫したいレベルで和兎への好感度MAXなのですが、悲しい哉、彼は当て馬男。少女漫画では結ばれない星の下に生まれた悲しき産物。

しかし、これは乙女ゲーなんで彼を選ぶことができます…!

対する初恋相手の黒髪眼鏡の椎葉亜樹那くんは、サッカー部所属の爽やかイケメンクラスメイト。変な味のお菓子を他人に押し付ける嫌がらせ(本人は悪意ゼロ)を頻繁にするという悪癖はありますが、亜樹那はどんなタイプにも態度を変えずにわけ隔てなく接するタイプの陽キャです。

とあるきっかけで亜樹那は冴子に興味を持ちグイグイ距離感を詰めていきます。

最初は拒絶しながらも距離感ゼロでしつこく接してくる亜樹那に冴子は絆されていくわけですが、いつもは明るく後ろ暗いところがない男が、ちょっと翳りを見せられちゃあ、惚れんわけにはいかんのですよ。冴子は時々亜樹那が見せる暗い表情が気になっている内に、気づけば好きになってしまう。ですが、この作品において失恋は通過儀礼なので、一端この初恋は潰えることに……そんなときに現れたのが、そう!亜樹那の幼馴染で学園の王子様の樫永和兎!!!傷恋編に入ります。

実は和兔、外面ではなく内面を見てくれた冴子に対して、既に好感度が高いんですよね。

なので、以前から気になっていた冴子が幼馴染との亜樹那に失恋したとなちゃ、もうほっとけねぇ〜。一見穏和(普段は見せない裏の顔あり)なみんなの憧れの王子様の和兔くんが恋愛に対しては押せ押せで攻めてくるというギャップにヲタクやられます。

また、和兔は趣味が小説の執筆なだけあって口説き文句の言葉の選び方がまぁ〜〜〜良すぎるんですわ。

なんやかんやあって恋愛小説を書くことなるんですけど、書くための理由が「君のため」じゃなくて「君のせい」にしてくるんですよ〜。んで「そっちのロマンチックでしょ?」って言ってくるのもたまんないです。

ここまで好きにさせたんだから責任とってくれやと言わんばかりの好意の押し付けがましさとスパイス程度の性格の悪さ、ラブでしかない。他にも「亜樹那に恋愛対象として見ないでほしいって最初に釘を押されたくせに亜樹那に惚れちゃう」冴子の素直さに意地悪そうに「可愛い」って揶揄するんところなんか、、、少しだけ性格悪〜〜

それを本人自覚していて、「こんな僕を選ぶなんて君は男の趣味が悪い」って自虐気味なのも、ウ~~~〜〜泣

 

もう傷恋編で和兔に対する好感度ゲージが上がりまくりで、私に呼応するかのように冴子も結構絆されちゃってるんですけど、恋に前向きになり始めたときにこそ現れるのが過去の男・椎葉亜樹那。

ヤメロ〜泣もう和兔って決めきってんだ、、、俺を揺り動かすなと徹底抗戦を試みますが、段々明かされていく亜樹那の暗い表情に込められた切ない過去に普通に泣きました。勿論、そこには和兔との因縁もあるという……。

 で、2周目で追加される亜樹那視点のエピソードに、なかなか真意が分かりづらかった亜樹那の真実を知ることができて、倍泣ける。

なので辛い過去を乗り越え、冴子と幸せになった姿は素直に祝福できました。和兔にオンリーラブを誓った私としては彼を切り捨ててしまったという罪悪感と言う名の怪我は負わされてますけど。

 

和兎視点のエピソードもこれまた良いんですよ…。亜樹那と冴子に対する屈折した想いや王子様ともてはやされているが好きな子には全くなびいてもらえないことへの苦悩など、恋愛に対する普通の男子高校生らしい部分が一層愛しい。特に冴子を好きになった理由を懺悔するかのように語る姿、こじらせ男子が好きなのでたまりませんよ。

そして、普通の男子高校生を演じる日野聡さんの演技の塩梅もめちゃくちゃ「良き」なんです。。。

ちなみに和兔は亜樹那がいないと冴子のことは好きになりません。そういうところが失恋から始まる新たな恋の旨味というか、本命がいないとそもそも始まってなかった当て馬男の因果が片恋いコントラストの憎くも愛しいところですね。

 

一巻は男二人に取り合われる三角関係というよりは、亜樹那と和兔との間に冴子が加わることで新たに生まれた関係性による化学反応?が売りだと思います。

亜樹那も和兔も自己評価が低いため、冴子を真に幸せにできるのは相手のほうと勘違いしてるので、お互い譲り合っちゃうところも面白かったです。

和兔という性癖ぶっ刺さり属性を差し引いても、人間関係の面白が楽しめる一巻が一番好きでした。

 

しかし、第一巻は冴子があまりにも本命に一途だった描写が印象的だったため、和兎を選択する理由づけが弱かったのも否めないので、もう一章分くらい欲しかったですね。

 

・ 第二巻 「後輩×主人公×先輩」

最も三角関係の美味しさを味わえるという点で評価の高い第二巻。

 

個人的にはワンコ系爽やかスポーツマンの後輩の檜渡鈴太朗への恐怖と有能生徒会長桐坂保への萌えの洪水に感情をボロボロされました…。キャラ萌えはダントツなんですけど、その分精神的ダメージが一番大きかった巻でした。

 

 

有能生徒会長の桐坂保、一巻から登場するんですけど、初対面から冴子のことが好きなのがバレバレなんですよね。なのでチョイチョイ冴子にアプローチしますが、総スルーされる不憫ぷり。

桐坂保は冴子を無理やり生徒会に入れ、様々な行事を通してジワジワ自分のことを好きになってもらおうという野望を抱いておりましたが、檜渡鈴太朗の登場によってあえなく頓挫。

 

この檜渡鈴太朗とかいう中学三年生のバスケ部男子は、とあるキッカケで冴子に仄かな恋心を抱いていました。物語が始まる前から恋が始まっていた点は二人とも共通してますね。先に告白したのは、鈴太朗。もちろん初対面で惚れられる要素が理解できない冴子は困惑するのですが、桐坂保からの「新しいことにチャレンジしてみたらいいジャン!(俺との恋とか)」というアドバイスを真に受けて、まずはお試しからということで告白を受けてしまうんですよ…墓穴。

 

自分で自分の首を絞めた桐坂保(笑)。個人的には下手に策を練らずにドストレートにアタックしていったほうが冴子には効いたんじゃないですかね…。策士、策に溺れるとはまさにこのこと。

ちなみに声帯主の森田成一さんからは「悪い攻め方ではなかったと思います。もう少しバラエティに富んだ策を練るとさらに良かったと思います」(公式HPより引用)と評されるのもなお面白い。ようやく攻略キャラに昇格したというのに、他の男に掻っ攫われるなんで、不憫愛しい桐坂保。

 

 

 

冴子は鈴太朗とのお試しの付き合いから恋心を育み、鈴太朗の看過できないやらかしなどありながらも(?)無事に正式交際に発展します。二人の交際模様は甘酸っぱくてくすぐったいですがトキメキは詰まっていますので、後輩キャラ好きな方にはたまらないと思います。しかし、鈴太朗に好意を抱くクラスメイトの女子による妨害や不甲斐なさ、冴子の自己肯定感の低さで鈴太朗を信じきれなかったことで二人の関係はこじれてしまい破局を迎えてしまうという……。

 

この時点でヒロインは一巻以上に「もう恋なんてしねぇ!!!」って頑なになっちゃいますが、失恋の後には傷恋編が始まりますので、当て馬男・桐坂保選手の登板です。

 

鈴太朗と幸せそうな冴子を困惑させたくないため、一度は身を引いたこの恋。しかし、鈴太朗が冴子を傷つけたとなりゃ黙って見てるわけにはいかない。本当はずっと好きだった。俺は絶対君を傷つけたり不安にはさせたりしないと迫ってくる桐坂保。

しかし、冴子の傷心に漬け込んだりせず、自分の魅力で押していく様は、愛でしかないじゃん泣

 

ところで、この桐坂保。顔が良くて成績優秀、優しくスマートなので女性にモテモテ。2年連続生徒会長を務めるあげるなど人望も高く、年上の包容力も兼ね備えたまさに乙女の夢のような男。しかし、この男留まることを知らない。

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いい加減にしてほしい。有能要素のオンパレードに萌えを通りこしてキレです。しかし、有能だからこそ冴子さんは「こんなデキる男がなんで私に…」と気遅れしちゃうんですよね。ここでも己の能力の高さが恋の障害になるなんて、辛いね、桐坂保。

 

本当に桐坂保の押しつけがましくない好意の示し方が最高なんですヨ…。

あと、一巻の時から垣間見れてたんですけど、冴子を前にしちゃうと焦っちゃうのか、言葉を詰めて早口でしゃべってしまう桐坂保が本っ当にカワヨ~~~~~。

桐坂保の有能さや魅力、尽きることのない愛と包容力に、私に同調して冴子も完堕!で締めくくりたい所ですが、本作は三角関係ミッションをこなさないといけないのでね……まあ、しゃしゃり出てくるわけですよ、元カレ鈴太朗が。

鈴太朗、どうしても冴子が諦めきれないため、あの手この手を使って接点を持とうとしてくるんですが、よく言えば一途で情熱的、悪く言えば粘着質で執念深い。

元カレがいつまでも関わろうとしてくるのって個人的には気持ち悪さしかないので。。。桐坂保の有能さを相まって鈴太朗の行動は私的にはアウトでした。

冴子は別に嫌いで鈴太朗と別れた訳じゃないので、鈴太朗の行動を受け入れてしまうのですが、コレ嫌いで別れたらストーカーですよ……。

 

一途に自分を想ってくれた包容力の塊のような男に心を移しながらも、過去好きだった男への情に揺れる様は一番三角関係をしていたように思います。私は桐坂保へのラブが大きいが故に鈴太朗の直情的な愛を受け入れられなかったのでしんどい巻でした。

 

 

ところで「桐坂保」っていう字面めちゃくちゃ良くありませんか。あまりに良すぎてついフルネームで呼んでしまいたい。 

 

・第三巻 「先生×主人公×転校生」

第3巻は当て馬転校生・楡居凪冴子の等身大のケンカップルの恋の成り行きを見守るのが楽しかったです。

お互いが「失礼なやつ!」というマイナスから始まる関係。ひょんなことから覆る評価に芽生える友情、それがいつか恋に変わるのは時間の問題ーーーーという乙女ゲー・少女漫画において使い古された展開なんですけど、ベタな話って面白いんですよ。

友達なのに、女の子として好きになっちゃったことに対する葛藤など等身大の高校生の恋愛を見せてくれたので、2巻の泥沼で損傷したメン治療に効果覿面でした。

楡居凪は、冴子同様に「友達はいらない」「一人でいい」と思っているボッチなんですけど、かと言って根暗な側面はなく何事にもあっさり対処してくれるイイ男でした。あと頭もいい。時々素直になれずについ意に反した態度を取っちゃうところもありますが、若さ故の未熟なんで可愛いもんです。

何より好意を素直に伝えてくれるのが気持ちよかった。彼はツンデレに見せかけて感情を表に出すことに対して臆病じゃないんですよね。冴子ほど周りの視線を気にしてないので。

冴子にとっては楡居凪こそが1番上手くいく相手だと思います。趣味や感覚も共通しているし、他の攻略キャラに比べて突出した特徴がないので(酷い言いよう)コンプレックスを擽られない…。

 

初恋編のお相手は、無気力歴史教師の楠見清孝をすっ飛ばして楡居凪のことばかり語ってしまったのですが、楠見先生も別に悪くなかったですよ(適当)?

ただ、楠見先生はいまいち真意が理解しにくい割りに衝撃もさしてないというか…。2周目で彼の過去を見ても、「そうだったのか…」程度の感想しか出てこない。素直に気持ちを伝えてくれる楡居凪に比べると楠見先生は私の中ではあまりに分が悪かったです。

あと、仕事に対する熱意のなさとか、過去を踏まえると仕方ない部分もあると思うんですけど、もう少し責任持って頑張れよと思ってしまったり。赤点取りまくった冴子の勉強の面倒を見るシーンがあるんですけど、「特定の生徒を特別視してる」と噂を立てられたくらいで辞めちゃうし。生徒に対して「教師辞めたい」という発言など、いい年したモラトリアム野郎なので同じ社会人として直視できない。

ダメな大人の男に対して「しょうがないなぁ、むしろそこが好き」という性癖持っている人にとっては合ってるのかな…。

でも、冴子が楠見先生を好きになる過程はこのゲームの中では1番丁寧に描写していたと思いますし、好意を言葉にできないという「先生×生徒」モノ特有のもどかしさは存分に味わえます。

 

…と他2巻に較べると語ることに対する熱量がありませんでした。3巻も好きですよ。結構三角関係楽しめるし。先生も案外大人げないの姿見せてくれて面白かったし…。

 

 

○おわりに

 

シナリオが短いことは否めないんですが、恋愛描写は丁寧なので私的には乙女ゲームの役目を果たしてくれたので大満足です。

プレイ中はとても楽しくて、終盤になるにつれて寂しさを感じてしまうくらい愛着を抱くなど、ここ数年の中では大ヒット作でした。

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